弦楽器隊の話。
アリアの本音的な何か、ホモっぽいのはいつものこと。オリ盤月一お題「喫煙所にて」お借りしました。
アリアの本音的な何か、ホモっぽいのはいつものこと。オリ盤月一お題「喫煙所にて」お借りしました。
「隣、いい?」
別に断る理由なんてないし、ここは僕の場所でもないのに。それでも声をかけるところがこの人らしいとも言えるけれど。頷く代わりに、口を開く。
「……珍しいね、リオンさんがくるの」
本当にふっと思い出したようにみたいな頻度だから、知っているはずなのに少し驚いてしまう。それと同時に吸っている自分の煙草とはまた別の苦みが広がる。この人が紫煙を燻らせに来るタイミングに気が付いてからずっとそう。
「まあね、ちょっとそういう気分」
「別にいいけどさ……」
知ってる、本当は知っているのだ。リオンさんが煙草を手にするときは江夜さんに何かあったとき。相方なんて言うのはおこがましいレベルだけれど、それでも僕はこの人と同じ楽器をあの人の隣で奏でているし、あの人は僕が誰よりも尊敬してる憧れの人。どちらに目を向けていても、いずれは気づくことだ。
けれどもそれを口に出して尋ねることはしない。……むしろできない、というべきか。そうするには僕はあまりにもこの人を、そしてあの人を知らない。もう結成してから五年は経つというのに、心の距離も演奏技術も、何もかもが追いつかない。だから、踏み込めない。
「アリアさあ、強いのに変えた? ユキさんがなんか心配してたよ」
「ああ、まあそうですね」
誰のせいだと思ってんだ、そう思いながら煙を吐き出す。二人には届かない、苛立つたびに一日の本数が増えて銘柄も強いものに変わって、そんな僕の気持ちだって二人は知らない。ただでさえ、年の差が色々なものを阻む、年下だからなんて遠慮は必要ないのにあの人たちはいつも僕に気を使う。
「ねえ、どうしたら大きくなれるかな」
「……煙草吸うと伸びなくなるっていうけど」
一番メンバーの中で年下、背も大きくないし、女形だし。それが理由なのかなんて確信は持てないけど、要因じゃあないのかと疑うには十分だろう。
「禁煙しろってこと?」
「そうは言ってないけど」
一応、合法な年齢だしねって付け足してからリオンさんは笑った。ふわふわしてるその奥で何を考えてるのか分からなくて、一番ほっといたら実は危ないんじゃあないかと喫煙所に現れるたび思う。分かりやすいあの人の方が、まだマシなのかもって。
「……休憩終わりだってよ、ギター隊」
背中越しに聞こえた声はどこかぼんやりしていて、ああやっぱり。と思いながら立ちあがる。朝は普通に見えたけれど、はっきり言って顔色が悪い。リオンさんがいるとき、呼びに来るのはいつも江夜さんだから、この瞬間はひどく憂鬱なのだ。憔悴しきった声が耳に届くのと、三人で並んだ時の紛れもなく頭一つ分は二人より小さいことをまざまざと思い知らされる感覚だとか。
「え……ちょっ、結構まだ残ってるんだけど」
「じゃあ一口寄越せよ」
リオンさんに寄りかかるようにして、その手から煙草を奪って吸い出した江夜さんに、今回はまたヒドイ。と目を逸らしたくなった。本当に思い出したようにたまにしか吸わないというのに、さらに気まぐれで江夜さんが口をつけることは本当に稀だから。
「……まっず」
「なら吸わなきゃいいのに」
少しだけ、明るくなった二人の声も耳をふさぎたくなるくらいに、嫌いなんだ。阻害されてるような、二人の間の特別感を見せつけられてるようで。
僕じゃ、役不足なんですか。
「早く戻らないと、沙雪さんに怒られるんだからね」
呑み込んだ代わりに吐き出すのは可愛くない毒。それが、二人にとっての僕なら仕方ないじゃない。
別に断る理由なんてないし、ここは僕の場所でもないのに。それでも声をかけるところがこの人らしいとも言えるけれど。頷く代わりに、口を開く。
「……珍しいね、リオンさんがくるの」
本当にふっと思い出したようにみたいな頻度だから、知っているはずなのに少し驚いてしまう。それと同時に吸っている自分の煙草とはまた別の苦みが広がる。この人が紫煙を燻らせに来るタイミングに気が付いてからずっとそう。
「まあね、ちょっとそういう気分」
「別にいいけどさ……」
知ってる、本当は知っているのだ。リオンさんが煙草を手にするときは江夜さんに何かあったとき。相方なんて言うのはおこがましいレベルだけれど、それでも僕はこの人と同じ楽器をあの人の隣で奏でているし、あの人は僕が誰よりも尊敬してる憧れの人。どちらに目を向けていても、いずれは気づくことだ。
けれどもそれを口に出して尋ねることはしない。……むしろできない、というべきか。そうするには僕はあまりにもこの人を、そしてあの人を知らない。もう結成してから五年は経つというのに、心の距離も演奏技術も、何もかもが追いつかない。だから、踏み込めない。
「アリアさあ、強いのに変えた? ユキさんがなんか心配してたよ」
「ああ、まあそうですね」
誰のせいだと思ってんだ、そう思いながら煙を吐き出す。二人には届かない、苛立つたびに一日の本数が増えて銘柄も強いものに変わって、そんな僕の気持ちだって二人は知らない。ただでさえ、年の差が色々なものを阻む、年下だからなんて遠慮は必要ないのにあの人たちはいつも僕に気を使う。
「ねえ、どうしたら大きくなれるかな」
「……煙草吸うと伸びなくなるっていうけど」
一番メンバーの中で年下、背も大きくないし、女形だし。それが理由なのかなんて確信は持てないけど、要因じゃあないのかと疑うには十分だろう。
「禁煙しろってこと?」
「そうは言ってないけど」
一応、合法な年齢だしねって付け足してからリオンさんは笑った。ふわふわしてるその奥で何を考えてるのか分からなくて、一番ほっといたら実は危ないんじゃあないかと喫煙所に現れるたび思う。分かりやすいあの人の方が、まだマシなのかもって。
「……休憩終わりだってよ、ギター隊」
背中越しに聞こえた声はどこかぼんやりしていて、ああやっぱり。と思いながら立ちあがる。朝は普通に見えたけれど、はっきり言って顔色が悪い。リオンさんがいるとき、呼びに来るのはいつも江夜さんだから、この瞬間はひどく憂鬱なのだ。憔悴しきった声が耳に届くのと、三人で並んだ時の紛れもなく頭一つ分は二人より小さいことをまざまざと思い知らされる感覚だとか。
「え……ちょっ、結構まだ残ってるんだけど」
「じゃあ一口寄越せよ」
リオンさんに寄りかかるようにして、その手から煙草を奪って吸い出した江夜さんに、今回はまたヒドイ。と目を逸らしたくなった。本当に思い出したようにたまにしか吸わないというのに、さらに気まぐれで江夜さんが口をつけることは本当に稀だから。
「……まっず」
「なら吸わなきゃいいのに」
少しだけ、明るくなった二人の声も耳をふさぎたくなるくらいに、嫌いなんだ。阻害されてるような、二人の間の特別感を見せつけられてるようで。
僕じゃ、役不足なんですか。
「早く戻らないと、沙雪さんに怒られるんだからね」
呑み込んだ代わりに吐き出すのは可愛くない毒。それが、二人にとっての僕なら仕方ないじゃない。
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1994/02/24
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pixivのオリ盤その他オリジナル作品中心。腐向けが多い、というか腐向けしかないかもしれない。
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