「世界の外側で毒されていく感情」の前夜の話。
内容としても対になってる(つもり)
リオンと江夜がぐちゃぐちゃしてるだけ。リオンもやっぱりヤバかった。
お題『心霊写真じゃありません、私です』or『お望みならば、 』【元気】 #kuroyagi http://shindanmaker.com/134159 『お望みならば、』の方を使用しました。
内容としても対になってる(つもり)
リオンと江夜がぐちゃぐちゃしてるだけ。リオンもやっぱりヤバかった。
お題『心霊写真じゃありません、私です』or『お望みならば、 』【元気】 #kuroyagi http://shindanmaker.com/134159 『お望みならば、』の方を使用しました。
真夜中にけたたましく携帯電話が鳴りだすことも、そう珍しくはなくなってしまった。学生時代は一応音が鳴らないように配慮していたもののいつなんどきやって来るか分からないコールに備えてバイブレーション設定した携帯を握りしめて寝たこともあった。
「……はい、江夜?」
「ごめん、こんな夜中なのに」
機械越しの声は誰が聞いても分かるくらいあからさまに震えていて、出てきそうだった溜息は喉奥に無理やり押し込んだ。だって、吐き出す理由なんてないこれ以上あいつを不安になんてさせられない。それが例えあいつに向けた物でなくても、耳に入れる必要はない。
「どしたん、眠れない?」
口調はいつものままに、けれど片手は手近に散った服をかき集めて忙しなく動く。普段の活動時間を思い出せば起きていても不思議はないけれど明日の予定を考えればもう眠っているべき時間だ。
けれど、それだけではこうはならないことくらい嫌というほど分かっている。少し放り出した家の鍵を手探りで見つけるのに手間取ったけれど、これでいつでも出ていける。
「……江夜?」
「なんでもない、ちょっと……うん」
言葉を濁したところで、全部筒抜けだというのに。実は驚くほど甘えるのが下手で、そのくせ甘えたなあいつはどうしたってギリギリまで、いやそれ以上のところまで行ってしまってもそうしようとはしない。限界をとうに越えたそれは留まることを知らずに溢れ出す、別にかまわないけれど。
曖昧な返事を返したまま、次の言葉を紡ぐこともなくブツリと音を立てて電話は切れた。そこで押し込めたはずの溜息がやっと出てくる。我慢することしか知らないあいつに、パラドックスを抱え続けた結果爆発するまで何もしてやれない。なんて役立たず。
けれどそんなことばかり考えていてもしょうがない、あいつが待ってる。家を飛び出して、ひたすら夜道を急ぐ。地元とは違う、消えることを知らない街の明かりはどこか冷たい。
案の定鍵なんてかかってなかったドアを開けて部屋の中に踏み込むと、投げ出されたカッターが真っ先に目に入る。
「な、んで……」
微かに耳に届くか届かないか、そのレベルの小さな声だけれど職業柄耳はいいのだ。それがあいつの声ならなおさら、この耳に届かないわけがない。起動しているのかも分からないPCの前に座りこむ痩せた身体を抱きしめるとかわいそうなくらいに強張った肩。自分から触れるのは平気なのに、触れられるのは苦手なのは未だに変わらない。
「江夜のためなら、いつでも来るよ」
「……っ馬鹿だろ! お前がそうやって甘やかすからっ、お前だけじゃねえ……みんな、みんななんでいい加減愛想尽かさねえの? こんな、こんなっ……!」
そんな日はまず来ない、なんて言っても多分江夜は信じない。でも、少なくともオレのことだけは信じてほしいと思う。結局、オレは江夜に自分のエゴを押し付けているだけにすぎないのだ。
江夜が望むのならなんだってする、なんて言う反面オレは江夜が一番求めているものを与えようとはしない。そのくせ、中途半端な優しさで毒するようにオレに依存させているといっても過言ではない。手にしたカッターを取り上げることはせずに、それが動脈に触れる寸前で止める。「××て」という懇願を流してただこうして世界から目を背けさせる卑怯なやつでしかない。
一緒に死んで、の方がまだマシだなんて俺も大概おかしいのかもしれない。どうしたって、オレは江夜から手を放すなんてできないんだ。
不器用すぎて、泣くことも忘れたように声を詰まらせるだけの江夜の手を取って指先を絡めたら、脱力してオレに寄りかかってきた。
これでまた、もう一つと枷を外していくんだろう。後戻りできないところまで行っても、気づかないくらいに。
「……はい、江夜?」
「ごめん、こんな夜中なのに」
機械越しの声は誰が聞いても分かるくらいあからさまに震えていて、出てきそうだった溜息は喉奥に無理やり押し込んだ。だって、吐き出す理由なんてないこれ以上あいつを不安になんてさせられない。それが例えあいつに向けた物でなくても、耳に入れる必要はない。
「どしたん、眠れない?」
口調はいつものままに、けれど片手は手近に散った服をかき集めて忙しなく動く。普段の活動時間を思い出せば起きていても不思議はないけれど明日の予定を考えればもう眠っているべき時間だ。
けれど、それだけではこうはならないことくらい嫌というほど分かっている。少し放り出した家の鍵を手探りで見つけるのに手間取ったけれど、これでいつでも出ていける。
「……江夜?」
「なんでもない、ちょっと……うん」
言葉を濁したところで、全部筒抜けだというのに。実は驚くほど甘えるのが下手で、そのくせ甘えたなあいつはどうしたってギリギリまで、いやそれ以上のところまで行ってしまってもそうしようとはしない。限界をとうに越えたそれは留まることを知らずに溢れ出す、別にかまわないけれど。
曖昧な返事を返したまま、次の言葉を紡ぐこともなくブツリと音を立てて電話は切れた。そこで押し込めたはずの溜息がやっと出てくる。我慢することしか知らないあいつに、パラドックスを抱え続けた結果爆発するまで何もしてやれない。なんて役立たず。
けれどそんなことばかり考えていてもしょうがない、あいつが待ってる。家を飛び出して、ひたすら夜道を急ぐ。地元とは違う、消えることを知らない街の明かりはどこか冷たい。
案の定鍵なんてかかってなかったドアを開けて部屋の中に踏み込むと、投げ出されたカッターが真っ先に目に入る。
「な、んで……」
微かに耳に届くか届かないか、そのレベルの小さな声だけれど職業柄耳はいいのだ。それがあいつの声ならなおさら、この耳に届かないわけがない。起動しているのかも分からないPCの前に座りこむ痩せた身体を抱きしめるとかわいそうなくらいに強張った肩。自分から触れるのは平気なのに、触れられるのは苦手なのは未だに変わらない。
「江夜のためなら、いつでも来るよ」
「……っ馬鹿だろ! お前がそうやって甘やかすからっ、お前だけじゃねえ……みんな、みんななんでいい加減愛想尽かさねえの? こんな、こんなっ……!」
そんな日はまず来ない、なんて言っても多分江夜は信じない。でも、少なくともオレのことだけは信じてほしいと思う。結局、オレは江夜に自分のエゴを押し付けているだけにすぎないのだ。
江夜が望むのならなんだってする、なんて言う反面オレは江夜が一番求めているものを与えようとはしない。そのくせ、中途半端な優しさで毒するようにオレに依存させているといっても過言ではない。手にしたカッターを取り上げることはせずに、それが動脈に触れる寸前で止める。「××て」という懇願を流してただこうして世界から目を背けさせる卑怯なやつでしかない。
一緒に死んで、の方がまだマシだなんて俺も大概おかしいのかもしれない。どうしたって、オレは江夜から手を放すなんてできないんだ。
不器用すぎて、泣くことも忘れたように声を詰まらせるだけの江夜の手を取って指先を絡めたら、脱力してオレに寄りかかってきた。
これでまた、もう一つと枷を外していくんだろう。後戻りできないところまで行っても、気づかないくらいに。
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1994/02/24
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