学生時代のリオンと江夜の話。
オリ盤月一お題「人魚姫」お借りしました。
いつにもまして意味が分からない
オリ盤月一お題「人魚姫」お借りしました。
いつにもまして意味が分からない
何故こんな本が学校の図書館にあるのかなんて疑問はあったけれども、そっと頁を捲るところは様になっていると思う。向こうの書架から熱烈な視線を向けている娘に気づいているのかいないのか。水曜日の放課後、ここは彼のテリトリーと言っても過言ではない。人も疎らな図書室で、江夜に声をかけていいのはごく少数の人間ではないだろうか。本来の用事を果たしに声をかけるのなら話は別だけれど。
「……バカだよねえ」
子供向けの絵本を手にした江夜は笑った。話自体は誰もが知っているそれだから、絵の方に見入っていたのだろうか彼にしてはやけにゆっくりと読み進めていた気がする。
「なにが」
「人魚姫、バカだよなあって」
ぱたん、カウンターの上に置かれたそれ。何を思って口にしてるかなんて分からないから、次の言葉を待つ。江夜はオレよりも大分(というかかなり)ロマンチストだし、時々女子なんじゃないかってレベルの言葉がぶっ飛んでくるけれども。
「だって、別のやつのものになるっていうのに自分だけ死ぬなんて意味ないと思うよ、俺は。どうせなら王子を殺して、一緒に死ねばよかったんだ」
「……ずいぶんと過激なこと言うね」
「愛してるから王子を殺して自分が生き残るなんてできなかったんだろ?だったら一緒に死ねばそれが一番だって俺は考えるんだけどな」
いつの間にか、さっきまで棚の間からちらちらとこちらを伺っていた娘は立ち去っていた。それは別段、気に留めるものではないのだけれど。
「……俺、思うんだけど」
「なに?」
「人魚姫って、人間じゃなかったから王子に選ばれなかったんじゃねえかなって」
曰く、王子とハッピーエンドで終わる童話はちゃんとした人間の少女が主人公であるという彼の独自の統計らしい。
「人外とは結ばれないの、違う生き物だから。いくら人間と同じ見た目になっても、ダメだったんだよ」
対価を支払ってもなお、手には入らない。姿だけは同じでも中身は違うのだから、決して交わることはないのだと江夜は言った。それが何を示しているかはオレには分かりかねた、こういった時の彼の思考はかなり複雑で、難解極まりない。オレよりも頭がいいはずのユキさんにも分からないらしい、というよりかは二人は思考のベクトルが違うからなのだろうけど。
「まあ、信じてないけどね。人魚姫」
「ジュゴンは?」
「……それ、実在してるからな。……なんていうかさ、人魚姫ってそうとうふかあい海の底に住んでたってことは、深海魚の一種だと思うわけ」
「……はあ」
こうして突拍子もない仮説が出てくるのも、珍しいことではない。オレも天然だなんだと言われていることはこの際置いておいて。
「深海魚ってさ、なかなか見た目グロいじゃん、人魚姫は海の光が届くところに近づくにつれて、自分の容姿が見えるようになることにはなんとも思わなかったけど、王子に出会って全部気づくわけ。だから魔女に頼んでキレイな女の子にしてもらったんだよ」
ああ、それで異質同士が何とかに繋がるのかとは何となく分かったもののそれで結局なんだったのか、分かることも江夜が口にすることもなかった。要は、そんなに共感し得なかった、というだけのことだろうか。
「まあ、俺がもし天に召されて世界中の恋人見守れなんて言われた暁には全員呪い殺す自信はあるけど」
「……左様ですか」
オレは人魚姫のことよりも、中途半端な同情で彼女を近くに置いた王子の方が気に食わないけれど。
「……バカだよねえ」
子供向けの絵本を手にした江夜は笑った。話自体は誰もが知っているそれだから、絵の方に見入っていたのだろうか彼にしてはやけにゆっくりと読み進めていた気がする。
「なにが」
「人魚姫、バカだよなあって」
ぱたん、カウンターの上に置かれたそれ。何を思って口にしてるかなんて分からないから、次の言葉を待つ。江夜はオレよりも大分(というかかなり)ロマンチストだし、時々女子なんじゃないかってレベルの言葉がぶっ飛んでくるけれども。
「だって、別のやつのものになるっていうのに自分だけ死ぬなんて意味ないと思うよ、俺は。どうせなら王子を殺して、一緒に死ねばよかったんだ」
「……ずいぶんと過激なこと言うね」
「愛してるから王子を殺して自分が生き残るなんてできなかったんだろ?だったら一緒に死ねばそれが一番だって俺は考えるんだけどな」
いつの間にか、さっきまで棚の間からちらちらとこちらを伺っていた娘は立ち去っていた。それは別段、気に留めるものではないのだけれど。
「……俺、思うんだけど」
「なに?」
「人魚姫って、人間じゃなかったから王子に選ばれなかったんじゃねえかなって」
曰く、王子とハッピーエンドで終わる童話はちゃんとした人間の少女が主人公であるという彼の独自の統計らしい。
「人外とは結ばれないの、違う生き物だから。いくら人間と同じ見た目になっても、ダメだったんだよ」
対価を支払ってもなお、手には入らない。姿だけは同じでも中身は違うのだから、決して交わることはないのだと江夜は言った。それが何を示しているかはオレには分かりかねた、こういった時の彼の思考はかなり複雑で、難解極まりない。オレよりも頭がいいはずのユキさんにも分からないらしい、というよりかは二人は思考のベクトルが違うからなのだろうけど。
「まあ、信じてないけどね。人魚姫」
「ジュゴンは?」
「……それ、実在してるからな。……なんていうかさ、人魚姫ってそうとうふかあい海の底に住んでたってことは、深海魚の一種だと思うわけ」
「……はあ」
こうして突拍子もない仮説が出てくるのも、珍しいことではない。オレも天然だなんだと言われていることはこの際置いておいて。
「深海魚ってさ、なかなか見た目グロいじゃん、人魚姫は海の光が届くところに近づくにつれて、自分の容姿が見えるようになることにはなんとも思わなかったけど、王子に出会って全部気づくわけ。だから魔女に頼んでキレイな女の子にしてもらったんだよ」
ああ、それで異質同士が何とかに繋がるのかとは何となく分かったもののそれで結局なんだったのか、分かることも江夜が口にすることもなかった。要は、そんなに共感し得なかった、というだけのことだろうか。
「まあ、俺がもし天に召されて世界中の恋人見守れなんて言われた暁には全員呪い殺す自信はあるけど」
「……左様ですか」
オレは人魚姫のことよりも、中途半端な同情で彼女を近くに置いた王子の方が気に食わないけれど。
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1994/02/24
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pixivのオリ盤その他オリジナル作品中心。腐向けが多い、というか腐向けしかないかもしれない。
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